OTAKING / Toshio Okada

【徹底解説】ハンター・ハンター1巻冒頭の演出とクラピカの伏線

※本記事は、YouTube動画の内容をもとに文字起こしを行い、話し言葉や誤変換を整理したうえで、要点が伝わるようにまとめています。
内容理解を目的としており、発言をそのまま再現したものではありません。
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岡田斗司夫ゼミの『ハンター・ハンター』完全講座第1回では、1巻冒頭を中心に、作品がなぜ最初から面白いのかを丁寧に読み解いています。

カイトを通じたジンの見せ方や、クラピカとレオリオのキャラクター描写、会話シーンの構図とセリフ量の演出から、冨樫義博の漫画表現の巧みさが見えてきます。

とくにクラピカの「怒りが風化する」という言葉を手がかりに、序盤の時点で後の物語につながる人物設計まで考察しているのが今回の大きなポイントです。

『ハンター・ハンター』完全講座が始動し、第1回では1巻冒頭を徹底的に読む

岡田斗司夫ゼミでは、5年かけて完結したガンダムゼミに続き、今年から漫画『ハンター・ハンター』の単行本を毎月読み進める企画が始まりました。できれば1回で単行本2冊ずつ解説したいものの、既刊38冊を追うだけでも3年以上かかる長期企画です。

その第1回では、1巻全体を一気に進めるのではなく、あえて冒頭の「嵐の出会い」周辺に絞り、作品の見せ方やキャラクターの立て方を丁寧に読み解いています。単なるあらすじ紹介ではなく、なぜこの作品は冒頭から面白いのか、その構造を絵とセリフの両方から見ていく講義になっています。

扱うのは主に、カイトを通じたジンの見せ方、クラピカとレオリオのキャラの立ち上げ方、セリフ量をそのまま画面の圧迫感に変える演出、そしてクラピカの「怒りが風化する」という印象的な言葉です。序盤の何気ない場面に見えても、後の長大な物語につながる設計がすでに入っている、というのが今回の大きなポイントでした。

講義の前提として、作品の引用とネタバレを明確にしている

今回は完全ネタバレ前提の講座として進められている

今回の企画は「完全講座」と銘打たれている以上、当然ながらネタバレ前提です。まだ読んでいない人には、まず漫画を読んでから見てほしいという姿勢がはっきり示されています。

同時に、配信を見る人の中には、実は『ハンター・ハンター』を読んだことがない人もかなりいるはずだ、という話も出てきます。『鬼滅の刃』や『ワンピース』のような超有名作でも、名前だけ知っていて未読という人は珍しくありません。ガンダムゼミでも、配信開始時点ではちゃんと本編を見ていた人は1割もいなかったという経験があるからこそ、今回も講義を入口にして実際の漫画に触れてほしい、という導線が作られています。

漫画の引用は、独自解釈ではなく一定の基準を意識して行っている

講義では漫画のコマやページを使って解説するため、著作権上の引用についての考え方も説明されています。基本的には、引用した分量以上に自分の解説を加えるという考え方で進めており、ページを読むために必要な時間を上回るだけの説明を添えるようにしている、という立場です。

ここでは、日本の著作権をめぐる実務では明快な正解があるわけではなく、民事で和解に至ることが多いため、最終的な白黒はつきにくいという現実も語られます。そのうえで、数少ない判例として知られる小林よしのり裁判を参照しつつ、自分なりに安全側で運用しているという説明でした。

さらに、YouTubeはアメリカのプラットフォームであり、フェアユース寄りの判断が働く可能性もあるとしながらも、講義としては日本の法的感覚を意識していると整理しています。つまり、ただ画面映えのために作品を映すのではなく、評論として成立するだけの解説量を伴わせることを重視しているわけです。

第1巻冒頭は、ジンという不在の中心人物をどう立てるかで始まっている

カイトは「聞き書き坊主」としてジンのすごさを伝える役割を担っている

冒頭で重要なのは、主人公ゴンの目的である父ジンが、まだほとんど姿を見せないまま物語の中心に置かれていることです。ジンは18巻まで本格的には出てこないにもかかわらず、最初から「会いたい人物」として強く印象づけられています。

そのために使われているのが、カイトの語りです。カイトはゴンに対して、「ジンさんに認めてもらうための最終試験が、彼を探し当てることなのさ。これがどんな狩りより難しい。彼は最高のハンターだ」と語ります。この役割は、演劇用語で言うところの「聞き書き坊主」に近いと説明されます。つまり、当人ではない人物に語らせることで、読者にその人物像を伝える方法です。

設定を説明するだけなら平凡なセリフにも見えますが、重要なのはその後の処理です。ゴンが家に帰り、父の写真を見ながらこの言葉を心の中で反復することで、最初はそれほど強く聞こえなかったセリフが急に効いてきます。単に「最高のハンターだ」と言わせるのではなく、モンタージュのような反復によってセリフを強いものに変えているという読みが、今回の大きな見どころでした。

良いセリフを先に置くのではなく、並べ方で良いセリフにしている

ここで強調されていたのは、冨樫義博は最初から名言だけを投げ込む作家ではない、という点です。むしろ、一見さらっと流れる言葉を後から効かせる構成がうまい。ジンの写真をクローズアップし、ゴンの視線と、写真の中のジンがこちらを見返しているような構図を重ねることで、「彼は最高のハンターだ」という言葉がただの説明を超えて、ゴンの人生目標として立ち上がってきます。

これはセリフ単体の強さではなく、絵と配置と反復によって意味を育てるやり方です。だからこそ、読み返すと序盤のシーンなのに異様に記憶に残る。今回の講義では、この冒頭の処理だけでも、冨樫義博が漫画を単なる物語ではなく、時間の流れを持つ演出媒体として使いこなしていることが見えてくると語られていました。

レオリオとクラピカは、セリフだけでなく絵の配置でキャラが立っている

3人が初めてそろう場面では、身長差と目線だけで関係性が見えてくる

ゴン、レオリオ、クラピカが1つの画面に収まる場面では、3人の関係がすでに絵で整理されています。レオリオは本来背が高いため、そのまま立たせて3人を同じコマに入れると顔が小さくなってしまう。そこで、あえてしゃがませることで身長差を感じさせつつ、3人の表情をしっかり見せる構図にしている、という指摘がありました。

しかも目線の処理が細かい。レオリオは横目で見ていて、ゴンは読者を真正面から見る。一方でクラピカだけは正面を向きながら、読者と視線を合わせていません。この外し方によって、最初から「この人物は少し違う」という印象が出ています。

普通なら、3人並んだ初登場では全員を正面に向けて見せたくなるところです。けれども、クラピカだけ視線を外すことで、後の孤高さや距離感がすでににじんでいる。こうした一見ささいな差が、キャラクターの第一印象を決定しています。

抜けのある構図と画面密度の調整で、会話シーンが飽きないように作られている

自己紹介の場面でも、ただ人物が立って喋るだけでは終わりません。最初は横に開けた構図で画面に余白を作りながら、それぞれの顔をしっかり入れることで間の抜けた印象にならないようにしています。そこからセリフ量が増えるにつれて、構図が斜めになり、キャラの位置関係も少しずつ変化していきます。

特に面白いのは、会話が進むにつれてレオリオが伸びたり縮んだりするように見えることです。最初は存在感のある立ち方をしていたのに、クラピカの説明が始まると、画面の中で相対的に圧縮されていく。セリフが増えることが、そのまま絵の圧迫感になっているわけです。

これによって、ただの会話シーンなのに流れが生まれます。読者は無意識のうちに、「今はクラピカが場を支配している」と感じる。つまり、情報の主導権が誰にあるのかを、コマの構成で見せているのです。

クラピカの過剰な説明は、性格紹介であると同時に画面演出でもある

クラピカは正義感ゆえに説明しすぎる人物として描かれている

船長に「なぜハンターになりたいのか」と問われた場面で、レオリオは答えを拒み、クラピカは逆に必要以上に語ります。この対比が、初期の2人のキャラを非常にわかりやすくしています。

クラピカはただ理屈っぽいのではなく、自分の立場や考えを誠実に説明しようとする人物です。なぜそれを言う必要があるのか、なぜ自分はそう考えるのかを、とことん言葉にしようとする。その結果、彼の正しさは伝わるのですが、同時に周囲との摩擦も生まれてしまいます。

この「正義があるからこそ、説明が過剰になる」という性格は、後のクラピカにもつながる重要な芯です。単にクールで頭が良いキャラとして置かれているのではなく、理屈と正義感が強すぎるせいで人間関係をこじらせる人物として、すでにこの時点で輪郭ができています。

吹き出しの量そのものを使って、圧迫感を絵にしている

今回の講義で繰り返し語られていたのが、クラピカの「セリフが多い」という特徴を、文字情報としてではなく絵として見せている点です。普通なら長台詞の場面では、人物の顔を大きく見せたり、感情の表情に寄ったりしたくなります。ところが『ハンター・ハンター』では、むしろコマが詰まり、吹き出しが画面を占有することで、読者にも圧迫感が伝わるように描かれています。

レオリオがだんだん居場所を失い、ついには何も言えなくなる流れも、その圧迫感の中で自然に見えてきます。つまり、「クラピカが喋りすぎる」という設定説明を文字で済ませるのではなく、読者自身が読みにくさと密度で体感するように作っているのです。

さらに、この会話の途中でカメラが回り込むように人物配置が変わり、レオリオとクラピカの位置関係がいつの間にか隣接していく点も指摘されていました。画面内の圧迫から、船長の一言による解放へつなげる流れまで含めて、かなり計算された会話劇になっています。

クラピカの「怒りが風化する」は、第1巻の時点で後半の姿まで予告している

死そのものではなく、怒りが薄れていくことを恐れている

クラピカが「死は全く怖くない。一番恐れているのは、この怒りがやがて風化してしまわないことだ」と語る場面は、第1巻の中でも特に印象的な箇所として取り上げられていました。このセリフの面白さは、単に復讐者としての覚悟を語っているだけではないところにあります。

ここで言う「風化」は、まず復讐の動機が弱まってしまうことを指します。本来の目的はクルタ族の目を取り返すことなのに、時間の経過の中で怒りが薄れ、行動の原動力が失われてしまう。それをクラピカは恐れています。

けれども、この言葉はそれだけではありません。もう1つの意味として、復讐そのものが目的化してしまい、自分がなぜそれをしているのかを見失うことへの恐怖も含んでいます。怒りがなくなってしまうのも怖いし、逆に怒りの形だけが残って義務のように復讐を続けるのも怖い。クラピカが恐れているのは、復讐の成否以前に、その過程で自分自身を失うことなのだと読み解かれていました。

「怒りが風化する」という日本語の選び方が異様にうまい

この場面では、言葉の選び方そのものの巧さも強調されていました。「怒りが風化する」という表現は、日常会話ではまず使いません。けれども、初見でも意味は一瞬で伝わります。しかも、ただ怒りが冷める、薄れる、忘れる、と言うよりも、時間の経過の中で削れ、失われ、形だけが残るようなニュアンスまで含んでいます。

こうした言葉を、ごく自然にキャラクターのセリフとして置ける国語力が冨樫義博のすごさだ、という話になっていました。珍しい言葉をひけらかすのではなく、そのキャラクターの思考と感情にぴたりと合った語として機能しているから、読者は違和感なく受け取れてしまうわけです。

現在のクラピカを知って読むと、このセリフは予言にも見える

さらに興味深いのは、この第1巻のセリフが、後のクラピカの状態を先取りしているように見えることです。実際、物語が進んだ現在のクラピカは、クルタ族の目を取り戻しながらも、「自分は何のためにこれをやっているのかわからない」という地点に近づいています。

最初は鮮烈だった怒りが、完全に消えたわけではないにせよ、当初と同じ形では残っていない。クルタ族のことを言われれば反射的に怒るものの、かつてのような一直線の衝動ではなくなっている。この変化を踏まえると、第1巻の「怒りが風化してしまわないことを恐れている」は、単なる決意表明ではなく、将来のクラピカの危うさを予告するセリフにも見えてきます。

つまり、冨樫義博は序盤から、クラピカという人物を長距離で設計していた可能性が高い。復讐に燃える人物として出すだけではなく、その怒りがどう変質していくかまで含めて最初から仕込んでいるように読めるのです。

第1回の結論は、『ハンター・ハンター』は冒頭から絵と言葉で人物を深く作っているということ

今回の第1回では、第1巻のごく冒頭しか進んでいないにもかかわらず、それでも十分に内容があったと語られていました。実際、カイトによるジンの立て方、3人の初登場での目線と身長差、クラピカの長台詞を使った圧迫感、そして「怒りが風化する」という言葉の重さまでを見ると、この作品が最初からかなり高密度に作られていることがわかります。

『ハンター・ハンター』は設定が緻密、展開がうまい、伏線が多いといった語られ方をされがちですが、その土台にあるのは、セリフと絵をどう組み合わせれば読者の印象に残るかを熟知した漫画表現です。だから序盤の会話シーンひとつでも、ただ説明を読まされている感じにならず、キャラが立ち上がってきます。

今回の講義は、1巻冒頭を読むだけでも『ハンター・ハンター』の面白さはかなり見えてくる、ということを証明する内容でした。全体の長大さに圧倒される前に、まずは第1巻の最初の数話を、絵の配置や言葉の選び方に注目しながら読み直してみると、この作品がなぜ特別なのかがかなりはっきり見えてくるはずです。

#599「HUNTER×HUNTER」完全講座 第1巻 その1

出典:OTAKING / Toshio Okada

こちらが、今回の記事の元になったYouTube動画です。
要点だけでは伝えきれない話し方や空気感もありますので、
気になる方はぜひ動画の視聴やチャンネル登録をお願いします。

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